Dead man walking


鬱蒼と積もる雲の間に月が覗く 分厚い壁の鉄格子付の窓を覗く
古い机 便所の穴 簡素なベッド 細く痩せた男とボロキレを結った縄
日が暮れて残りのスペースは影が埋めて これらがこの部屋にあるものの全て
親父と同じ病気背負ったまま 首には三日前の自害失敗のアザ
これで二度目 死神さえ俺には興味ないよう
只々 毎日 時間だけが動く無限回廊 
世界との繋がりは1つ飯時に 毎度 毎度 こぼしてくれる目と足音だけの看守
すでに この廃墟に入って30年 独居房に打ち伏せられて はや25年
最後の面会は15年前 最後の糧 手紙がかけたのは10年前
何の濡れ衣だったかも どうでもよくなった 友との約束も忘れてしまった
我が命 この地にて最後となろう 今更外で生きていけるはずも無いだろう
まず 生きている内は土は触れないだろう 全部解ってる

*
alone alone 小さな箱 alone alone 鉄格子刻む窓
alone alone 小さな箱 alone alone 星が光る窓

太陽が昇って2、3時間後 ガチャガチャと五月蝿く反響する監獄
隣部屋の奴が地獄から逃れられる 死の刑罰を以ってしての開放か
体は国の解剖実験体 魂っていうのが何処にいくかは知らない
分厚い屋根と壁が無くなるだけマシか ココに来てから死刑執行は25人
やはり予想どうり1年に1人らしい そう つまり 1年後 俺の番に
この部屋自体が運命の下に 死神は静かに待っていた 確かに
横で開く重いドア 俺のスグそば 小さな声 小さな祈り
3人分の足音が右から左 カツカツ2人 ヒタリヒタリ1人
奥で扉の音がしてから静寂が戻った 何ともいえない気持ちだけが残った
名も顔も知らぬ隣人よ さようなら その日は心なし寂しい夜が
*
どうにも寝付けない 遠くで聴こえる呻き声にはもう慣れたはず
寝たところで夢の中でも自由ではないが 10何年ぶりかに飯も吐いた
突然フラッシュバックする朝方の声 意識は無意識に窓の方へ
最後の決断を自らの手で 着ている布切れ 全て破り縄に結び
1度目は左 4日前は右 3度目縄を真ん中に掛け
疼くアザの上にしっかりと掛け 椅子の上に汚れた細い足を掛け
いったい誰を恨めばイイと 呪われた四角い部屋に別れを
俺の最後 いつものあの星が見てる そして 静かに椅子を蹴る
*
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何とか抜けられそうな いや 逃げられるはずが無い 運命の罠か
しかし奥の扉で待っている 奴は 窓の下には居ないハズだ
しかし いまさら 外にあても何も無い しかし 今日見える空は何処までも広い
しかし この体で しかし 死は覚悟の上  しかし . . .

縄を2本の鉄格子に掛け 壁に刻む 死人此処に在りき
鬱蒼と積もる雲の間に月が覗く 縄にぶら下った 男を覗く